キュルノンチュエの創業者、山岡準治さん [旬の旨いもの]
自分が中途半端な奴なので、ひとつのことに、アホなぐらい、とことんはまってしまった人をとても尊敬しています。
そのひとり、飛騨高山で燻製工房「キュルノンチュエ」をはじめた山岡準治さんのことを書かせてください。
ミツワ自動車でポルシェのトップセールスマンだった山岡さんは、50歳を過ぎてから、食肉加工職人を志し、妻とひとり娘を都内に残し、単身で渡仏しました。
3年間、無給で燻製工房で働いた後、キュルノンチュエを開業。
2002年、小学館『サライ』の燻製特集で山岡さんを取材し、その後も仕事とプライベートで何度も話をさせてもらいました。
山岡さんが作る生ハムも好きでしたが、リエットも抜群でした。
そのなかでもカマンベールと同じ菌を用いた、白かびのソーセージはピカ一でした。
黒粒コショウがきいた白かびのソーセージはうちの豚児も大好きで、何度も送ってもらいました。
4年ほど前、弟子に燻製作りを任せ、引退。
鶴川の自宅に呼ばれ、二度ワインと手料理をご馳走になりました。
具合が悪いという話を奥さんから聞いていました。
いま出ている小学館の通販雑誌で、キュルノンチュエの記事を書かせてもらいました。
原稿を読んだ奥さんが、「これは中島が書いたものだ」と思い、入院中の山岡さんにもっていってくれたそうです。
本日、奥さんから「山岡が金曜日に死去しました」という連絡をもらいました。
縁あって、生前、最後の原稿を書く機会をいただきました。
山岡さんには、独立した弟子が3人います。
残念ながら師匠は死去しましたが、愛弟子がフランス仕込みの味を受け継いでくれるはずです。
山岡さんの愛車はフィアット・アバルトでした。
若い頃から、アルペンラリーに陶酔していた山岡さんは、70歳を過ぎてもアバルトで高山の山中をかっ飛んでいました。
あなたのような生き方は、真似ようと思っても絶対にできません。
でも、かっけーです。
山岡さん、あなたは永遠の不良少年でした。
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